フランスの日常生活や社会問題が垣間見える、おすすめのフランス映画のご紹介します。貧困、移民、老人介護、人種差別など、シビアな題材をテーマにしたものばかりですが、どれも登場人物に感情移入できメッセージ性のある作品です。観た後に虚しい気持ちしか残らない悲しい映画ではなく、切なくも人の温かさを感じる素敵な名作を選んでみました。
最強のふたり (2011)
パリに住む身体が不自由な富豪のフィリップと、介護人となった貧困層の移民のドリスとの交流を描いたヒューマンドラマです。実話を元にした作品で、フランスの格差社会がリアルに描かれています。
他人の同情にうんざりしていたフィリップを、ドリスは病人や金持ちだからといって特別扱いせず、ふたりは次第に親しくなっていきます。事故後も尊厳を持ち聡明なフィリップと型破りだけれどいつも本音でユーモア溢れるドリス。対照的なふたりが友情を育んでいく様子を、ときにコミカルに描かれているのが魅力です。
本国フランスでは歴代観客動員数で3位(国内映画のみで2位)、そして日本でも日本で公開されたフランス語映画歴代1位となり、世界を巻き込んだ大ヒット作でした。
https://www.youtube.com/watch?v=IfHOM7dPzZA&feature=youtu.be
サンバ (2015)
「最強のふたり」でドリス役を演じたオマール・シーと監督のオリヴィエ・ナカシュが再びタッグを組んだ本作。うっかり滞在ビザを失効し国外退去となった移民のサンバをオマール・シーが演じます。どんな時も明るさを失うことなく強く生きていくサンバに誰もが胸を打たれるはずです。
前作のヒットですでに時の人となっていたオマール・シー主演なので公開前からフランスでは大変注目され、本作のPRでは来日も果たし話題になりました。彼は本当に才能溢れる役者であり、ハリウッド映画にも出演するようになりましたので今後注目すべき人物です。
https://www.youtube.com/watch?v=atCPaROVrM0&feature=youtu.be
ベルサイユの子 (2009)
パリ郊外にあるベルサイユ宮殿を囲む森には多くのホームレスが住んでいると言われています。そんなベルサイユの森に暮らすホームレスのダミアンが、母親に置き去りにされた見ず知らずの子供のエンゾを世話することになり、困惑しながらも次第に絆を深めていく様子が描かれています。
ダミアン役のギョーム・ドパルデューは本作を最後に2008年10月に37歳の若さで急逝されました。彼の魅力も見逃せませんが、新たな名子役の誕生と言われたのがエンゾ役のマックス・ベセット・ドゥ・マルグレーヴの演技にも注目です。
フランスは日本よりも社会福祉が充実しているはずなのにホームレスが多くそのほとんどは移民や難民なのですが、ダミアンのように自らホームレスの道を選ぶフランス人の若者も増えているそうです。誰もが自身の生き方を考えさせられる映画です。
https://www.youtube.com/watch?v=tBB-1BBgy_Q&feature=youtu.be
クロワッサンで朝食を (2013)
パリの高級アパートに住む孤独な老婦人のフリーダとエストニアからやってきた家政婦のアンナが次第に心を通わせていくという話。大女優ジャンヌ・モローの10年ぶりの主演作として話題になりました。
フリーダはクロワッサンと紅茶を朝食にするのが日課。生粋のパリジャンならパンはパン屋に買いにいくのが当たり前ですが、着いたばかりのアンナにはわからずスーパーマーケットで購入したクロワッサンを出してしまいフリーダの機嫌を損ねてしまいます。フリーダのパリジェンヌらしい所も観ていて面白いのだけど、パリに来たばかりのアンナが毎晩ひとりでパリを散歩するシーンなどはパリに住んだことがある人なら誰もがその頃の自分を思い出すような場面です。フリーダもそんなアンナに若い頃の自分を重ね合わせて心を通わせていきます。
気難しいフリーダと優しいアンナ。対照的なふたりから大人なら誰もが共感できる何かを感じるはずです。介護問題についても考えさせられる作品です。
https://www.youtube.com/watch?v=tZ0K42OTYtQ&feature=youtu.be
ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲 (2014)
https://www.amazon.co.jp/QUEST-CE-QUON-FAIT-BON-DIEU/dp/B00O5GR9ZE?ie=UTF8&tag=iremono05-22
本作はフランスで年間興行収入第1位だった大ヒットコメディ映画ですが、日本では今のところフランス映画祭2015年で上映されたのみのようで全国ロードショーやDVDの販売はありません。そのため、フランス語を理解できる人にしかおすすめできないのが残念ですが、本当に面白い作品なのでご紹介します。
ロワール地方に暮らすヴェルヌイユ夫妻は上流階級の敬虔なカトリック教徒。3人の娘がユダヤ人、アラブ人、中国人と結婚し、せめて末娘だけは……と願っていたが末娘が連れて来たのはコートジボワール出身の青年だったのです。
移民問題を抱えるフランスならではの話ですが、実はフランスは人種差別に厳しく、問題を起こしたら場合によっては刑務所送りです。そのため、まっとうなフランス人は差別主義者として扱われるのをひどく嫌いますし、この家族も精一杯互いを気遣おうとするのですが、それぞれ少しずつ差別的でありその様子をコミカルに描いています。
https://www.youtube.com/watch?v=Tle_7J–f5I&feature=youtu.be
さいごに
こちらでご紹介した作品は全てシビアなテーマを題材にしていますが、時々クスッと笑わせてくれるたり、どこか心が温まる瞬間がある映画になっています。フランス映画に苦手意識を感じている人にもおすすめの名作揃いです。
映画のみで他国の文化を熟知するのは不可能ですが、フランスらしさを感じながら自他国の生活習慣や社会問題に目を向けてみるのもよいでしょう。