たまにはネットの喧騒を離れ、ひとり静かに推理小説などはいかがでしょうか。話題作を拾い読むのも面白いですが、ひとりの作家にこだわって作品を追っていくと、作者のトリックに対するスタンスなどもだんだんわかってきて、愉しみ方が増えます。これからの季節に「こたつでミカン+推理小説」は家ごもりの定番かも。本格推理小説のおすすめ作家をご紹介!
目次
昭和の本格推理小説作家、日本のアガサ・クリスティー「仁木悦子」
1957年に「猫は知っていた」で「第三回江戸川乱歩賞」を受賞し、80年代まで活躍したミステリー作家です。
長編「猫は知っていた」を始め、ほかの作品でもいきいきと活躍する、仁木雄太郎・悦子という兄妹探偵シリーズが代表作。
植物研究キチガイで、いつも穏やかなインテリ肌の兄+太っていて好奇心旺盛、どこへでも首を突っ込んでは兄に助けられてばかりの妹。長編も短編もこの二人の魅力が満載で、兄妹に「会いに行く」感覚で繰り返し読みたくなります。
謎解きを中心とした「本格推理小説」でありながら、ライトノベルの先駆けとも思えるような、カラッとしてすがすがしい、読後感爽やかな作風。
重病のため不自由な生活をしながらの執筆だった、ということを想像すると、そのあまりの明るさに圧倒されてしまいます。
ただし単純に明るいだけ、などと思うのはまちがいで、作品群の中でふと、底知れない人間の業のようなものに触れ、冷水をあびたような気持ちになったりもします。
「ぞっとする短編」ランキング1位は、独断で短編「粘土の犬」でしょうか。「粘土の犬」も収められた短編集はすでに絶版なので、古書を漁るしかないのが残念です。
仁木悦子のおすすめ作品
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推理小説では仁木兄妹シリーズのほか、私立探偵三影潤が活躍するちょっとハードボイルドな作品・あなたの近所にも住んでいそうな普通の小学生が、元気に事件を解決してしまう短編作品の数々…などなど、おすすめ作品がいっぱいです。
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伊奈初音
仁木雄太郎くんが兄としても、名探偵としても僕の完璧な理想像・・・!
2014/07/21
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TatsuyaYamamura
仁木悦子さんの猫は知っていたを読了。なんとまあ50年以上前の作品でした。文章から感じさせる隣のトトロくらいの年代の世界観と表装の中村祐介さんのポップさが親しみを出してくれました。読みやすい、お芝居のようなミステリー
2015/11/23
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言わずと知れたシャーロック・ホームズの生みの親「コナン・ドイル」
1891年のイギリスで、コナン・ドイルによって世に送り出されたシャーロック・ホームズは、もはや探偵の代名詞。
カリスマ性溢れた奇人・名探偵ホームズと、凡人ながらいざという時は頼りになるワトソンの名コンビは、キャラクター設定の雛形とすら言えるかもしれません。
発表当時から爆発的な人気で、ホームズを実在の人物と勘違いした人々が、作中に出てくる「ベーカー街221B」番地を訪れたり、コナン・ドイル宛に事件調査依頼を送ってきたりしていたそうですよ。
ホームズというとあまりにも有名すぎて、じつは作品を読んだことがない…という人もいるのではないでしょうか?
ホームズシリーズは長編が4冊・短編集が5冊の計9冊しかありません。刊行された通りにじっくり読んでいくのもいいですね。
ー以下、発行順に
「緋色の研究」(長編)
「四つの署名」(長編)
「シャーロック・ホームズの冒険」(短編集)
「シャーロック・ホームズの思い出」(短編集)
「バスカヴィル家の犬」(長編)
「シャーロック・ホームズの帰還」(短編集)
「恐怖の谷」(長編)
「シャーロック・ホームズ最後の挨拶」(短編集)
「シャーロック・ホームズの事件簿」(短編集)
コナン・ドイル自身は歴史小説家を自負しており、ホームズシリーズのあまりの評判を快く思ってはいなかったそうです。
ならば、とコナン・ドイルの他作品「勇将ジェラールの回想」などの歴史小説、恐竜が登場する「失われた世界」などのSF小説を読んでみても、正直「ホームズシリーズ」ほどは面白くはないです…。世紀をまたぎ、聖書に次ぐほどの大ベストセラーなのですから、作家本人の意図をも軽く超えているのでしょうね。
コナン・ドイルのおすすめ作品
ホームズシリーズを試しにちょっと読み始めるなら、独創的なプロットだらけでワクワクできる「シャーロック・ホームズの冒険」を、まずはおすすめします。
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凌
最近延原謙 訳の方のホームズ読んでるんだけどホームズ可愛すぎてやばくないこれ…って思うんだけど…顔赤くして照れるの超可愛くて間違ってラノベか同人小説でも読んでるのではっていう気分になってきた…
2015/08/13
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SMRG
これはすごい、BLを超えたブロマンスだなと思ったのは延原謙翻訳のシャーロックホームズで、地下でワトソンくんが撃たれた時にホームズが混じりっ気なしの愛情をただただぶつけるところの描写が我が生涯ベスト。
2015/07/28
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イタリアの世界的な記号論哲学者でもある「ウンベルト・エーコ」
1932年イタリア生まれ、記号論哲学者でもあり、学術書や評論も世界中で翻訳出版されています。
そんな学者肌のウンベルト・エーコが書いた推理小説「薔薇の名前」は1986年にショーン・コネリー主演で映画化もされ、題名くらいは聞いたことがある! という人も多いのではないでしょうか。
探偵役はバスカヴィルのフランシスコ会修道士・ウィリアムと、見習修道士アドソなのですが、これは明らかにコナン・ドイルのホームズ&ワトソンという定石を踏んでいます。
記号論や中世研究の知識をこれでもかと詰め込んでいるので、難解なのかな…? と思いきや、意外にするすると読めてしまいます。修道院が舞台で、ホモセクシャルな匂いもぷんぷん、中世のムードに浸りきれること、請け合い。
過去の偉大な作品や歴史的事実の引用・参照の宝庫なので、読み手が知識を増やせば増やすほど、新たな発見があるという、まるで迷宮のような構造になっています。
小説の構造自体が「推理」をうながしているという意味では、これが本当の「推理小説の中の推理小説!」なのかもしれません。
エーコのほかの作品「フーコーの振り子」や「前日島」なども、決して推理小説ではないのですが、どれも謎解きの要素が必ず含まれているのはさすが「記号論哲学者」と思わされます。
入り込みにくそうな印象とは裏腹に、読み始めるとぐいぐい引き込まれるエンターテイメント性。評論や対談などを読めば伝わってくる、ウンベルト・エーコの茶目っ気たっぷりな人柄によるところも、かなり大きいのでしょう。
ウンベルト・エーコのおすすめ作品
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織原観大
あるいはウンベルトエーコ『薔薇の名前』のように本を読んでいる間に知らぬ間に毒が身体に入ってきて死んでしまうかのような。
2014/12/11
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悪の華
ウンベルトエーコは言った。書籍とは、他の書籍について書かれてるものに過ぎないと。古典を知れば、現代作家の作品など読むに気にならない。所詮は焼き直しだからな
2015/05/28
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推理小説は一気に読みましょう
いかがでしたか?
ちょっと読んでしばらく放っておいて…という読み方は、推理小説に限っては不向き。前のページでどんな事件が起きていたのか、すぐに忘れてしまいますから。
まとまった休みがある時に、一気に一冊読んでしまいましょう。知的パズルは頭の体操にもなり、気持ちもすっきりするかも!? ぜひお試しください。