和室は、日本独特の文化。畳敷きの部屋にいると、なんだか気分も落ち着くものです。しかし、その畳、みなさんは正しく掃除できていますか? 間違った方法で掃除をしていると、かえって畳の汚れをひどくしたり、傷めてしまったりする要因にもなります。毎日の掃除から、日常にある汚れを落とす方法まで、今すぐ使えるお掃除法を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
畳を掃除する上で3つの注意点
畳は湿気に弱い
畳は水分を吸収しやすく、水分を含んだ雑巾などで拭くと、変色やカビの原因になってしまいます。汚れがひどいからといって濡れた布で拭いてはいけません。拭き掃除をするときは、乾いた布か、固く絞った布を使いましょう。
掃除は畳の目に沿って
畳には目があります。掃除するときは、それが掃除機でもホウキでも雑巾でも、畳の目に沿って行うようにしましょう。目に沿わない方向で掃除をすると、目の間にゴミが詰まってしまったり、畳が傷んだりする恐れがあります。
以下の説明でも、書いていなくても、目に沿って行うことを前提としています。
重曹はNG!
油汚れをよく落とし、便利で安全な掃除グッズとして重宝される重曹。しかし、畳に使うと変色させてしまいます。「クレヨンや食品、カビなどには重曹を!」と書いてあるサイトもありますが、畳を美しく保ちたいなら使うべきではないでしょう。
畳の掃除方法
注意点を確認したら、いよいよ掃除の方法を見ていきましょう。毎日のお掃除、汚れが気になるとき、そして大掃除のときにぜひやっておきたいことまで、段階別に紹介します。
毎日の掃除
ベストはホウキとから拭き
最も畳を傷めにくいのは、ホウキと雑巾を使った方法です。やり方は簡単で、目に沿ってホウキで掃いたあとに、乾いた雑巾で全体を拭くだけです。
また、お茶を飲んだ後の出がらしがあれば、それを畳の上にまいて、ホウキで掃き集めましょう。ホコリが舞うのを防いで集めやすくなり、また、緑茶の殺菌・消臭効果も期待できます。
びしょびしょの状態だと畳を傷めてしまうので、水がしたたらない程度に乾いたものを使ってくださいね。
掃除機は優しくかける
いくらホウキと雑巾がいいといわれても、ホウキなんてない、朝の忙しいときにそんなことやっていられないという人の方が多いかもしれません。そんなときは、掃除機のかけ方に少し気を使ってみましょう。
まず、掃除機によっては「畳モード」がついています。もしあれば、それを使うようにしましょう。
畳モードがない場合は、心持ち掃除機を浮かすようなイメージで、優しくふんわりと畳の表面をなでるように掃除します。ゴミを吸い取ろうという意識が強いとついつい押しつけてしまいがちですが、それでは畳の目がつぶれて、逆にゴミがとりづらくなってしまいます。
掃除機をかけるときは一畳ずつ目に沿って、できるだけ「ゆっくり丁寧に」を心がけましょう。また、畳の縁(へり)の部分には、掃除機をかけません。これも、表面がすれるなど、痛みの原因になるからです。
ローリングワイパーでも掃除できる
意外に思われるかもしれませんが、フローリング用のワイパーも畳掃除には効果的なんです。注意点は、ドライタイプのものを使うこと。
目に沿って優しくなでるようにすれば、目に詰まった汚れもしっかりキャッチしてくれます。いつもフローリングはこれで済ませているという方は、ぜひ畳にも使ってみてください。
汚れが気になるときの掃除方法
掃除機で吸い取れない汚れがついてしまった、あるいは、掃除機だけだとなんだか不安だという場合には、次に紹介する方法が効果的です。目的別にみていきましょう。
クエン酸で除菌
見えない汚れが気になるときは、クエン酸が便利です。
クエン酸は、食品添加物などにも使われる酸味の成分で、スーパーやホームセンター、100円均一などで簡単に手に入ります。いろいろな場所の掃除に使える便利グッズなので、常備しておいて損はありません。
- クエン酸
- 水
- バケツなどの容器
- 雑巾2枚(一枚は乾いたものを用意)
- クエン酸水をつくる。割合は、水100mlに対してクエン酸小さじ半分、500mlなら小さじ2杯程度。
- 清潔な雑巾をクエン酸水につけて固くしぼる
- クエン酸水につけた雑巾で、畳の目に沿って優しく拭く
- 乾いた雑巾でから拭きをする
クエン酸には除菌・消臭効果があり、畳にひそむ見えない汚れを消してくれます。クエン酸水が残ってしまったら、そのまま流しに捨てられます。また、水回りの掃除にも効果的なので、ついでに使ってみるのもよいかもしれません。
クエン酸がないときは、お酢でも代用できます。水の中に、少し臭いがするくらいまでお酢をまぜ、クエン酸と同じように掃除しましょう。
カビにはアルコール除菌
カビが生えてしまったときには、消毒用のアルコールスプレー(エタノール)が有効です。アルコールは揮発性が高いため、スプレーをしても畳を傷めることはありません。一方で、カビに対しては除菌効果を発揮してくれるので、まさに畳のカビ退治にぴったりの存在といえます。
- 消毒用アルコール
- スプレー容器
- 紙コップなどの小分け容器
- 使い古しの歯ブラシ
- 乾いた雑巾
- マスク
- ゴム手袋
- 消毒用アルコールを扱うときは、マスクとゴム手袋をつけておく。また、しっかりと換気をした状態で行う。
- 消毒用アルコールをスプレー容器に入れ、畳のカビに吹きかける
- 15分ほど放置する
- 小分け容器に消毒用アルコールを入れ、歯ブラシを浸ける
- 消毒用アルコールをつけた歯ブラシを使い、畳の目に沿ってカビをかきだすようにする
- カビのついた歯ブラシは小分け容器の消毒用アルコールで洗う
- カビが落ちるまで、4~6を繰り返す
- カビがとれたら消毒用アルコールを再度スプレーする
- 乾いた布でしっかりから拭きする
消毒用アルコール(エタノール)が気化したものをたくさん吸いこむと、のどが痛くなったり気分が悪くなったりすることがあります。また、大量に手につくと、手の油分が失われて手荒れを引き起こすことがあります。充分な換気と、マスク、ゴム手袋を忘れないようにしましょう。
また、汚れた歯ブラシを消毒用アルコールで洗いながら使うので、小分け容器に入れたものが汚れたら、都度捨てて、新しく入れ直しましょう。
なかなか落ちない汚れには塩が効果的
畳の汚れには、なんと塩も効果的。粒子が汚れをかきだしてくれる他、抗菌作用もあるんです。
- 塩
- 歯ブラシ
- 掃除機、もしくはホウキ
- (必要なら)雑巾2枚(一枚は乾いたものを用意)
- 汚れが気になる箇所に、指の腹を使って塩を優しくすりこむ
- 畳の目に沿って歯ブラシでかきだすようにする
- 汚れが落ちたら、掃除機かホウキで取り去る
- 色が染みている場合は固く絞った雑巾で拭いたあと、から拭きをする
ポイントは、すりこむときに目と目の間に入れることを意識し、優しくこすること。あまり力をかけすぎると、畳が傷んでしまいます。
最後は掃除機やホウキで汚れと塩を取り去りますが、とり切れなかったとしても、ただの塩です。口に入れても問題ありませんから、小さい子どもやペットがいるご家庭でも安心して試せる方法です。
塩は、コーヒーやジュース、醤油やソースといったものをこぼしてしまったときにも効果的。まずは乾いた布やキッチンペーパーでこぼしたものを吸い取り、汚れに塩をまきます。塩が湿ってきたら掃除機やホウキで取り除きましょう。汚れが取りきれない場合は、上記の手順を試してみてください。
クレヨンや化粧品には住居用洗剤
クレヨンや化粧品など、油性の汚れがついてしまったときには、家具などに使う住居用洗剤を使いましょう。
- 住居用洗剤
- 歯ブラシ
- 雑巾2枚(一枚は乾いたものを用意)
- 住居用洗剤を歯ブラシにつけ、畳の目に沿って汚れを落とす
- 固く絞った雑巾で拭き、その後から拭きをする
畳専用の洗剤も市販されていますが、使用頻度を考えると、住居用洗剤を使った方がよいでしょう。汚れを落とした後は、しっかりとふき取るのを忘れずに。
ダニが気になるときは殺虫剤を使うのも手
もし、犬や猫などのペットがいる、和室の風通しが悪いといったことがあれば、畳にダニが発生している可能性があります。毎日掃除機やホウキを使って掃除をしていればそれほど問題にはならないはずですが、気になるようなら、一度、畳用の殺虫剤を試してみてもよいでしょう。
ただし、ダニを殺してもその死骸やフンは残っています。殺虫剤を使った後には、掃除機やホウキを使ってしっかり掃除をしましょう。
年に2回は畳干しを
畳を清潔に使う一番のポイントは、畳をしっかりと乾燥させておくことです。それによってカビやダニを防ぐことができ、畳自体を長く使うことができます。
- マイナスドライバー(あれば畳を上げるかぎ針)
【必要に応じて用意するもの】
- 果物の缶詰のような大きめの缶(もしくはそれに相当するもの)
- マイナスドライバーを畳の縁(へり)の間に差し込み、てこの要領で畳を上げる※畳の上げ方についてはこちらの動画も参考にしてください
- 畳のあった場所が分からなくならないよう、印をつけておく
- 日の当たる場所に畳を干す。その際、畳表が日光に当たらないよう、畳床を表面に出しておく
- 畳を干す場所がない場合は、持ち上げた畳に缶などをかませ、空気の通り道を作っておく
- 4~5時間ほど干したら元に戻す
畳干しは、春と秋の年2回、よく晴れた風のある日に行うのがベストです。それが難しい場合は、年末の大掃除のときでもかまいませんから、できる範囲でやってみてください。
畳を上げることで畳の下にたまった汚れも一掃できますし、畳のコンディションも回復します。
畳を汚れにくくする方法
換気をしっかり行う
基本は、できるだけ和室に風が通るようにすること。窓があればよいのですが、窓がない部屋の場合、戸を開けてしっかりと空気を循環させましょう。これだけで、カビやダニが発生する原因となる湿気を防げます。
畳の上にカーペットをしかない
畳の上にカーペットを敷くと、畳の通気性が悪くなります。同じように、大きな家具を固定して置くことも、避けた方がよいのです。
米ぬかで拭くときれいが長持ち
綿にくるんだ米ぬかで畳を磨くと、ツヤが出る上に、汚れにくく、ささくれにくくなります。家に米ぬかがある人は、ぜひ試してみてください。
毎日のお掃除がきれいの基本。半年に一度は畳干しを!
いかがでしたか?毎日きちんと掃除していると思っても、実は間違っていたという方もおおいのではないでしょうか。間違った方法だと汚れがとれないだけではありません。畳はデリケートなものなので、毎日の掃除で知らず知らずに傷つけてしまうことになるのです。
とはいえ、毎日、ホウキや掃除機をかけ、きちんと風通しをしていれば、カビやダニが発生することはほとんどありません。加えて、半年に一回だけ畳を干してあげれば、長い間、清潔に、そして傷めることなく使うことができます。
和室がある家が少なくなっているともいいます。畳は日本ならではの風景ですから、丁寧にお手入れをして大切に使っていきたいですね。