徹底して喜劇にこだわってきた三谷幸喜。映画作品は監督作品が6本、原作・脚本作品は3本と、テレビドラマに比べると少ない方ですが、どれも笑いに妥協なし!の傑作揃い。2015年10月には新作「ギャラクシー街道」が公開予定です。登場人物は全て宇宙人!という“宇宙”が舞台の初のSF映画で、香取慎吾・綾瀬はるかが主演を務めます。どの映画も常に豪華キャストの三谷映画、新作を見る前に全監督作品をチェック!
目次
12人の優しい日本人(1991)
三谷幸喜が旗揚げした東京サンシャインボーイズの舞台のために書き下ろした脚本を原作とした作品で、監督は中原俊。「もし日本にも陪審員制度があったら?」という設定の密室法廷劇です。いまや日本でも裁判員制度が取り入れられていますが、当時はまだこの作品の中では想像の産物でした!アメリカ映画「十二人の怒れる男」へのオマージュで、各シーンにパロディがあることでも有名です。
〈キャスト紹介〉典型的日本人が勢ぞろい!けれどなかなか一つにはまとまらない…
【塩見三省=陪審員1号】体育教師(40)。以前一度陪審員を経験。議長役。
【相島一之=陪審員2号】精密機械製造会社員(28)。妻とは別居中。
【上田耕一=陪審員3号】喫茶店店主(49)。議論や会議が苦手。気配り上手。
【二瓶鮫一=陪審員4号】元信用金庫職員(61)。被告の無罪を終始変えなかった唯一の人物。
【中村まり子=陪審員5号】商事会社庶務係(37)。メモ魔のキャリアウーマン。
【大河内浩二=陪審員6号】医薬品会社セールスマン(34)。仕事が気になり審議も上の空。
【梶原善=陪審員7号】タイル職人(32)。被告に近い年齢の男性。舞台で7号を演じたのも梶原善。
【山下容莉枝=陪審員8号】被害者と同世代の主婦(29)。5歳の息子がいる設定。
【村松克己=陪審員9号】開業歯科医(51)。議論好きの自信家。
【林美智子=陪審員10号】クリーニング店経営者(50)。気は弱いが心は純真。
【豊川悦司=陪審員11号】役者(年齢不詳)。4号と10号の無罪主張を援護。
【加藤善博=陪審員12号】大手スーパー課長補佐(30)。ちょっと仕切り屋。最後の切り札的存在。
笑の大学(2004)
三谷幸喜原作・脚本、星護監督による作品で、ラジオドラマ、舞台、映画の3バージョンがあります。それぞれのバージョンで出演者が違い、演者によって脚本を書き換えています。
ラジオドラマは1994年、舞台は1996年が初演で、海外でもロシア、イギリス、カナダ、香港、韓国で上演されました。
キャストがたった二人でほぼ取調室のみで展開されるストーリーであるにもかかわらず、映画版でも見事な演出と演技で三谷喜劇を再現しています。
〈キャスト紹介〉二人だけの取調室で繰り広げられる笑いと感動のドラマ!
【役所広司=向坂睦男】警視庁保安課検閲係の役人で、戦時中に喜劇など必要ないと豪語する人物。椿と一対一で検閲の手直しを命じるうち、台本作りの共同作業のような奇妙な協力関係が生まれる。
【稲垣吾郎=椿一】劇団「笑の大学」座付作家で、実在の喜劇作家・菊谷栄がモデル。台本直しの終盤に戦地への召集令状が届く。中盤での二人のやり取りにクスクス笑いが止まらず、最終的な二人の関係の変化とラストの向坂のセリフにグッときます!
二人のメインキャストの他にも小松政夫や木村多江、八嶋智人、加藤あい、木梨憲武など脇役でも豪華なキャストが配役されています!
ラヂオの時間(1997)
三谷幸喜の初監督映画で、原作は1993年に上演された東京サンシャインボーイズの舞台脚本です。
想像と声だけの演技で表現するラジオドラマ収録のスタジオを舞台に、脚本の改変に次ぐ改変で引っ掻き回されるキャストや関係者たちをコミカルに描いた、テンポの良い傑作コメディです!腹を抱えて笑えること間違いなし!
〈キャスト紹介〉三谷映画に欠かせない豪華キャストが初監督作で結集!
【唐沢寿明=工藤学】番組進行を指揮するディレクター。理不尽な台本改変には疑問を持ちつつも番組を無事終わらせることを第一としている。
【鈴木京香=鈴木みやこ】平凡な主婦。シナリオコンクールで採用された自分の台本が次々変更され戸惑い、ついにスタジオに立てこもってしまう。
【西村雅彦=牛島龍彦】番組統括プロデューサー。ラジオドラマに対する夢はあるが、周りに気を使いすぎ気苦労が絶えない。
【戸田恵子=千本のっこ】ラジオドラマの主演女優。大御所だが旬は過ぎていて、次々台本を改変させるわがままを言いだす。
【細川俊之=浜村錠】ラジオドラマの主演俳優。往年の二枚目俳優だが、演技に対してのプライドからわがままな千本のっこを疎ましく思う。
【井上順=広瀬光俊】深夜ラジオのベテランパーソナリティ。
その他小野武彦、近藤芳正、モロ師岡、梶原善など三谷作品ではおなじみのサブキャストや、映画版のみのキャストで田口浩正、布施明、藤村俊二や、市川染五郎、桃井かおり、宮本信子、渡辺謙がゲスト出演しています!
みんなのいえ(2001)
三谷幸喜の監督第二作目で、初めての舞台脚本ではない映画オリジナル脚本での監督作品です。
放送作家とその妻が新居を建てる物語で、設計を妻の同窓生の設計士に、施工を大工の父に依頼したものの、二人の対立でなかなか進まない!というドタバタ喜劇です。田中邦衛が演じる大工の父が素晴らしく、この作品をただの喜劇ではなく感動を呼ぶ深みを与えています。
作品の中で建てている家は、実際に一軒家を建てて撮影されています!
〈キャスト紹介〉ラヂオの時間キャストとのコラボが!
【唐沢寿明=柳沢英寿】建築デザイナー。モダニズム建築を志向するため、昔ながらの工法の大工・長一郎と全く意見が合わない。
【田中邦衛=岩田長一郎】大工の棟梁で、民子の父。昔気質の大工で日本の従来工法でしか家を建てない!と言い張る。
【田中直樹=飯島直介】テレビ番組の放送作家。家を建てる過程で、柳沢の強気と舅の面子の板挟みになる。夫婦仲は良好。
【八木亜希子=飯島民子】直介の妻・長一郎の娘で、柳沢とは同窓生。柳沢と長一郎の対立に夫とともに悩む。
メインの4人の他にも、たくさんのサブキャストが配役されている本作。お馴染みのキャストの他に、中井貴一が中井貴一役で出演していたり、明石屋さんまや真田広之、香取慎吾がチョイ役で出ています。
またラヂオの時間で登場した千本のっこなどのキャラクターが、そのままの役柄で出演しています!
THE 有頂天ホテル(2006)
三谷幸喜の監督・脚本の映画第三作目で、大みそかの晩から年明けまでに「ホテル・アヴァンティ」で起こる事件や騒動をドタバタコメディとして描いた群像劇です。
キャッチコピーは「最悪の大晦日に起きた最高の奇跡 最悪の大晦日は、最高の奇跡の始まりだった。」で、人間模様を描く中で感動を覚える場面もあり、三谷喜劇の典型が詰まっている映画とも言えます。
タイトルの由来は、「グランド・ホテル」と「有頂天時代」からで、内容にも影響がうかがえます。
〈キャスト紹介〉第三作にしてこれでもか!という豪華キャストをそろえています!
〈ホテル従業員〉
【役所広司=新堂平吉】ホテル・アヴァンティの申し分ない働きをする副支配人。
【松たか子=竹本ハナ】ホテル客室係。武藤田議員の元愛人。
【只野憲二=香取慎吾】ホテルのベルボーイ。歌手になる夢がある。
【伊東四朗=二階堂源一】ホテル総支配人。かなり能天気な性格。
【戸田恵子=矢部登紀子】ホテルのアシスタント・マネージャー。かなりの切れ者。
【生瀬勝久=瀬尾高志】ホテル料飲部副支配人。かなり怪しい。
従業員にはこの他にも、川平慈英、堀内敬子、石井正則、オダギリジョー、相島一之、声のみで清水ミチコなども出演!
〈ホテルの客〉
【佐藤浩市=武藤田勝利】国会議員。汚職し崖っぷちに立たされている。
【浅野和之=神保保】武藤田の秘書。
【篠原涼子=ヨーコ】コールガール。どこにでも現れる!
【原田美枝子=堀田由美】新堂副支配人の別れた妻。
【角野卓造=堀田衛】堀田由美の現在の夫。
【津川雅彦=坂東健治】大富豪。事故に遭っている。
ホテルの客には、「みんないえ」の主人公・飯島夫婦もゲスト出演しています!
〈ホテルに大晦日興業で来る芸能人〉
【西田敏行=徳川膳武】大御所風の演歌歌手。なぜかやたら死にたがる。
【梶原善=尾藤】徳川の付き人。
【唐沢寿明=赤丸寿一】芸能プロダクション社長。頭の一九分けがすごい!
【YOU=桜チェリー】シンガー。不幸を背負っている風。ラストで歌を披露。
【寺島進=ホセ河内】マジシャン。なぜかスパニッシュテイスト。
この他にもドナルド・ダックの声優もしていた山寺宏一がアヒルのダブダブの声で出演していたり、随所にクスッとポイントが!
ザ・マジックアワー(2008)
三谷幸喜の監督・脚本第4作目で、「誰にでもある“人生で最も輝く瞬間”」を描いた、3つの劇中劇を含む“映画愛”にあふれた作品です。
守加護という港町を舞台に、マフィアや町の人々・映画人たちが入り乱れて繰り広げる滑稽な喜劇であり、最後の“マジックアワー”に感動する三谷監督の力作です。
タイトルの“マジックアワー”とは、日没後の太陽が沈みきった後の残光に照らされる最も美しい時間を表す写真・映画の用語です。
〈キャスト紹介〉市川崑監督が出演した最後の作品!劇中劇にも豪華キャストが勢ぞろい!
〈守加護へ来る映画人たち〉
【佐藤浩市=村田大樹】だまされる男。クドイ演技のせいで売れない三流役者。備後にだまされて伝説の殺し屋デラ富樫を演じるために守加護へやってくる。
【小日向文世=長谷川謙十郎】振り回される男。村田のマネージャー。村田の一番のファンでありよき理解者。
【柳澤愼一=高瀬允】CM撮影隊のエキストラ。劇中劇「暗黒街の用心棒」で主役ニコを演じたが今や忘れられた元映画スター。村田の憧れの人。
〈天塩商会の人々〉
【妻夫木聡=備後登】だます男。天塩幸之助の部下でクラブ「赤い靴」の支配人。天塩の女・マリに手を出し絶体絶命に!命と引き換えに伝説の殺し屋デラ富樫を連れてくる約束をするが…偽の映画撮影をすることを思いつく!
【深津絵里=高千穂マリ】惑わす女。天塩の愛人で「赤い靴」の元踊り子。備後と町を出ようとする。
【西田敏行=天塩幸之助】牛耳る男。天塩商会のボスで守加護を牛耳っている。デラ富樫に命を狙われている。
【寺島進=黒川裕美】怖い男。天塩商会の代貸で天塩の腹心。
〈守加護の人々〉
【綾瀬はるか=鹿間夏子】尽くす女。「赤い靴」の従業員で、備後に好意を持っている。偽の映画撮影に協力する。
【伊吹吾郎=鹿間隆】動じない男。夏子の父で、「赤い靴」バーテンダー。備後には借りがあり娘と偽撮影に協力する。
【戸田恵子=マダム蘭子】厚化粧の女。「港ホテル」の女主人。
【浅野和之=清水医師】「港ホテル」の滞在客で、実は本物のデラ富樫。
【香川照之=江洞潤】のし上がる男。江洞商会の会長。天塩から独立して商会を興したが、敵対勢力となってデラ富樫を雇い天塩を狙う。
〈劇中劇の人々〉
【市川崑=映画監督】劇中劇「黒い101人の女」(市川崑監督作品「黒い十人の女」のパロディ)を撮影している。山本耕史が助監督役。
【中井貴一=磐田とおる】スターな男。「黒い101人の女」の主演俳優。
【天海祐希=喪服の女】同映画で磐田演じる主人公を射殺する女の役。
【唐沢寿明=ゆべし】劇中劇「実録・無法地帯」の主演俳優。
【谷原章介=ニコ】モノクロの殺し屋。劇中劇「暗黒街の用心棒」の主人公で、若き日の高瀬が演じていた役。
【鈴木京香=小夜子】モノクロの女。同映画のヒロイン役。
恒例になってきている前作品のキャラクターをそのまま登場させるコラボで、今作でも「THE 有頂天ホテル」の只野憲二役の香取慎吾がストリートミュージシャン役で出演しています!
ステキな金縛り(2011)
三谷幸喜の監督・脚本第5作目で、ファンタジー要素満載な法廷サスペンスであり、抱腹絶倒のコメディ作品です。殺人事件の証人はなんと落武者の幽霊!?三流弁護士の奮闘を描く異色喜劇です。
「目に見えるものがすべてではない」「生と死はどちらも身近に存在する」というテーマの不思議なコメディ作品で、何より面白いポイントは中井貴一演じる検事がオカルトを全否定するのに幽霊が見えるというパラドックス!
〈キャスト紹介〉出演者が多すぎて書ききれない!主役級メインキャストだけでも…7人?!
【深津絵里=宝生エミ】将来性皆無の三流弁護士。担当した妻殺し事件の被告人が「旅館で金縛りにあっていた」とアリバイを主張したことから、まさかの幽霊を証人として法廷に連れてくる!
【西田敏行=更科六兵衛】落武者の幽霊で殺人事件の証人として連れてこられる。生前は後北条氏の家臣だった。
【阿部寛=速水悠】エミの弁護士事務所のボス。法廷内で華麗なタップダンスを披露する。
【中井貴一=小佐野徹】やり手の検事。妻殺し事件ではエミに対する検事として法廷でやり合う。目に見えるものしか信じないが…実は幽霊が見える…のに見えないふりをする!
【竹内結子=矢部鈴子】被告人矢部五郎(KAN)の妻。姉の風子も一人二役で竹内結子が演じている。風子の夫役は山本耕史。
【浅野忠信=木戸健一】歴史学者で更科六兵衛の子孫。六兵衛を研究しているためエミに証言を依頼される。
【草彅剛=宝生輝夫】エミの亡き父。人権派弁護士として著名な人物。
7人のメインキャストの他にも、三谷映画常連の面々、そしてやはり前作「ザ・マジックアワー」の村田大樹がまだ売れてない役者として登場します。
清須会議(2013)
三谷幸喜の小説「清須会議」(2012)を原作にした映画化作品で、三谷監督・脚本第6作目です。
本能寺の変の織田信長暗殺後に実際に1582年にあった、織田家後継者や領地裁配分を決めた「清須会議」を題材にしています。
キャッチコピーは「誰だ!最後に笑うのは?歴史が動いた5日間」で、三谷幸喜初の時代劇映画です。歴史上の大人物が次々登場し、ポスターやソフトパッケージに写るメインキャストだけで総勢16人という豪華さ!
〈キャスト紹介〉豪華キャストここに極まれり!
【役所広司=柴田勝家】織田家の筆頭家老。織田信長の後継者を決めるため清須で会議を主催する。三男の信孝を推薦。お市の方に恋心を抱いている。
【大泉洋=羽柴秀吉】後の豊臣秀吉。織田家の五人の宿老の一人で、勝家に対抗し次男の信雄を推薦する。お市の方に憧れを持つ。
【小日向文世=丹羽長秀】織田家の宿老の一人。勝家の参謀として秀吉に対抗する。
【佐藤浩市=池田恒興】信長の乳兄弟。明智光秀の後釜として秀吉の推薦で宿老になり会議に参加することになる。
【妻夫木聡=織田信雄】信長の次男。出来の悪い次男坊で家臣からの人望も皆無。
【浅野忠信=前田利家】勝家の部下(与力)。秀吉にも友情を感じており、両者の対立に心を痛める。
【寺島進=黒田官兵衛】秀吉の軍師。秀吉に将来をかけ策を授ける。
【でんでん=前田玄以】織田家の文官。会議では準備や議事録の作成を担当。
【松山ケンイチ=堀秀政】織田家の家臣。宿老の接待役を担当。
【伊勢谷友介=織田信包】信長の弟。一門の重鎮で後継者争いのキーパーソン。
【鈴木京香=お市の方】信長の妹。兄の信長と秀吉には夫の浅井長政と息子を殺された恨みを抱いている。
【中谷美紀=寧】秀吉の妻。
【剛力彩芽=松姫】信忠の妻。武田信玄の娘で、信忠を本能寺の変で失ってからは息子の三法師と清須に住んでいる。
【篠井英介=織田信長】織田家の当主。本能寺の変で明智光秀に討たれる。
【浅野和之=明智光秀】織田家の宿老の一人だったが、謀反を起こし信長を討つ。秀吉に成敗される。
【中村勘九郎=織田信忠】織田家の嫡男。明智光秀の謀反で二条城にて討ち死にする。
時代劇では無理だろう…と思っていた恒例のキャストコラボがなんと実現!前作「ステキな金縛り」の更科六兵衛役の西田敏行が登場しています。
こうした遊び心が常にあふれている三谷作品。次作も大いに期待しています!