森見登美彦さんの小説の中から、特におすすめしたい作品を厳選して6冊紹介します。 ユーモラスに溢れた文章や独特の言い回しが特徴的な森見登美彦さんですが、その作品の舞台はほとんどが京都なんです。京都の魅力的な街中で繰り広げられる摩訶不思議な日常ファンタジーの世界をあなたも覗いてみませんか?休日を使って「ほどよくファンタジーの世界に浸かりたい。」という方におすすめな作品ばかりです♪
森見登美彦さんについて
プロフィール
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1979年1月7日生まれ。
奈良県出身で京都大学在学中に執筆した「太陽の塔」でデビューした日本の小説家です。
作品の特徴
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ほとんどの作品は、京都を舞台に1人の冴えない偏屈な男子大学生を中心に物語が進んでいきます。
基本的にはこの偏屈大学生の視点で物語が展開していくので、それに伴う心情や思考、感情の些細な変化が伝わりやすく、多くの人が共感し作品の世界観に魅了されています。
個性的な言葉の数々
古風でコミカルなクセのあるワードセンスや言い回しがそれら感情の変化をおもしろおかしく、飽きることなく伝えてくれます。
さきほども述べましたが、舞台は京都でそこに実際にある吉田寮(上の画像)、古本市、先斗町、鴨川デルタ、夷川発電所、伏見稲荷大社、熊野神社などの情景を独特の言葉で表現しているので、読めば読むほど京都に行きたくなること間違いなし!
登場人物の浮世離れした魅力
そして何よりも伝えたいことが作中に登場するキャラクターの魅力です。
森見さんが描くキャラクターはその全てが浮世離れした圧倒的な可愛さや面白さを誇っています。
もちろん小説なので顔を見ることはできませんが、作者さんの表現や舞台である京都も相まって一つ一つの行動や台詞からその人物の愛嬌やかわいさ、おもしろさが繊細に伝わってきます。
さて、前置きが長くなりましたが、数ある森見登美彦さんの作品の中からおすすめの作品を6選紹介していきたいと思います。
1:四畳半神話大系
1人の冴えない男子大学生が、自らの大学生活をバラ色に輝かせるために何度も過去に戻り大学生活をやり直していくというループものです。
森見登美彦さんの作品の中ではかなり有名な小説なので、どれから読んだら良いか分からないという方におすすめです。
学生の人でもそうでない人でも読めば「こんな学生時代でも面白かっただろうな。」と思わずにはいられないかと思います。最後のオチには思わず拍手するほどでした。
<ココがおすすめ①>クールで知的な黒髪の乙女が登場。そんな乙女が見せるギャップに心がときめきます
この小説には、明石さんというヒロインが登場します。
黒髪のクールで知的な少女ですが、苦手な蛾を目の前にすると「ぎょええええ」と叫び、我を忘れて取り乱す一面も。周りに流されず自分の道を進みながらも、他人を思いやる気持ちを見せたり、主人公の阿呆な行動に付き合う彼女の姿に多くの読者が虜になっています。歯に衣着せぬ真っ直ぐな物の言い方も魅力の1つです。
<ココがおすすめ②>主人公とその悪友「小津」との掛け合い
主人公がどれだけ大学時代をループしても必ずと言って良いほど、主人公に出会い、そして負のスパイラルを巻き起こす人物が「小津」
他人の不幸をおかずにご飯を三杯も食べ、三度の飯より悪行を好み、妖怪のような不気味なルックスを持つ「小津」に大学生活をバラ色どころか暗黒に染められてしまいます。
しかし、この「小津」と主人公の間に巻き起こるドタバタ劇のような絡みこそこの作品の醍醐味です。
主人公にとって迷惑でしかない存在である「小津」ですが、彼の巻き起こす超刺激的な大学生活に注目です。
原作の世界観を忠実に再現したアニメも大人気!
四畳半神話体系はさきほども書きましたが、アニメ化もされており、原作の独特な世界観や登場人物達の個性を忠実なまでに再現しています。
原作では4回ほどのループでしたが、アニメでは全11話分のループになっており、最終回のオチの完成度の高さはインターネット上で話題になっていました。
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2:夜は短し歩けよ乙女
まさにシュールなファンタジーといったような作品です。
ファンタジー系の作品が苦手な人でもスッと読み進めていける世界観と文章構成が特徴的です。
現実の厳しさを伝えつつも、最後は綺麗なオチになっているので何度読んでも元気になりますし、笑わせてくれる作品かと思います。
<ココがおすすめ①>乙女と男子大学生を中心に登場するハチャメチャな登場人物
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「黒髪の乙女」である”後輩”に想いを寄せる主人公の”先輩”は彼女の姿を追い求めて、夜の先斗町や下鴨神社の古本市、大学の学園祭を闇雲に走り周ります。
一方、もう1人の主人公である「黒髪の乙女」は好奇心旺盛で無邪気なため、自由奔放にあれよあれよと駆け巡ります。
そんな2人の視点から交互に描かれる恋の模様や摩訶不思議な登場人物、はちゃめちゃな情景にあなたも心掴まれるかと思います。
「電車」と称した三階建ての巨大な自動車を乗り回す富豪の老人。
「天狗」を名乗り、空を自在に飛び回る着物姿の奇妙な男。
他人の宴会に潜り込み、ただ酒を飲む特技を持つ歯科衛生士の美女。
などなどここには書ききれないほどに個性的なキャラクターが織りなす物語は是非とも読んでいただきたい名作になっています。
<ココがおすすめ②>作品史上最も可愛いヒロインの登場
夜は短し歩けよ乙女(1)<夜は短し歩けよ乙女> (角川コミックス・エース)
また最大のみどころはなんといってもヒロインである「黒髪乙女」の存在。
こちらの小説を読んだほとんどの人達は口を揃えて「黒髪の乙女が可愛すぎる!」と感想を漏らしています。
夜の街や人だかりの中を、ズンズン元気に突き進んでいく彼女の姿や、もらった鯉のぼりを背中に背負って歩いたり、かぼちゃが可愛くて膝の上で撫で愛でたりする姿が見えないのに可愛いと感じてしまいます。
また「なむなむ!」といった彼女独自のお祈り、”むんと胸を張って立つ”などの森見さん独特の表現による仕草や言動が心を掴んで離しません。
お読みになる際には、ぜひ彼女の可愛さを味わって下さい。私は彼女の「おともだちパンチ」が大好きです。
3:有頂天家族
こちらもアニメ化された作品の1つです。
京都を舞台にした狸と天狗と人間の奇想天外な物語。バラバラなようでいるけれど、ほんとうはお互いのことを思いやる狸一家の家族愛に涙腺が緩みます。
森見登美彦さんの作品の中では珍しく、登場人物がとっても多く、その一人一人のキャラクターの個性が強烈でなおかつバランス良く登場するので、ほどよいテンポで読み続けられます。
作中に出てくる「面白きことは、良きことなり!」という言葉があるのですが、この言葉に少しでもワクワクした方は読んでみることをおすすめします。
<ココがおすすめ①>人間よりも人情味が溢れている狸一家の結束の強さ
主人公が狸であるこの作品ですが、人間を描くよりも感情移入してしまうのは登場人物が全員がどこかしらで情に厚い一面を持ち合わせているからでしょうか。
天狗と狸と人間の三つ巴、京都を舞台に馬鹿騒ぎするこの物語の中には、様々な伏線が散りばめられ、後半はその伏線を紡ぎ合わせながらの急展開を迎えます。
そんな中でバラバラのように見えた家族の繋がりが、本当は互いに思いやり、結束していたことが明らかになっていき、その家族愛にもジーンと心を洗われるかと思います。
<ココがおすすめ②>美しい京都の描写が圧倒的に多い
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この作品には、下鴨一家が住む「糺ノ森(上の画像)」や関西電力(株)夷川発電所、天狗達が止まり木にしている魔王杉のある「熊野神社」、「四条大橋」や「八坂神社」など数々の京都名所が登場します。
この小説の面白いところは読めばほぼ必ず「京都に遊びに行きたい!作中の舞台を見てみたい!」と思ってしまうところなんです。
4:恋文の技術
個人的には森見登美彦さんの作品の中でもっとも声を出して笑ってしまうほどにギャグ満載、というか言い回しや言葉選びに森見さんのセンスが光ります。
待ち時間や移動時間などに読める手軽さですので、旅のお供などにも最適です!
物語は手紙を通じて展開していくので、始めは読みにくいかもしれませんが、すぐにのめり込んでいける面白さです。
<ココがおすすめ①>主人公「守田一郎」の書く手紙を通じて見えてくる物語展開
物語は主人公である守田一郎が書く手紙のみを通じて進んでいくので、ある人へ送った手紙の内容がわけ分からなくても、別の人への手紙を読んでみると分かったりする感じでした。
バラバラに展開していた物語が一つにまとまっていく感覚が好きな人は大好物かもしれません。
また当然のことながら守田一郎がそれぞれの人物によって書き方を変えているので、それをこっそり覗き見ている感覚も面白さの一つだと思います。
<ココがおすすめ②>主人公の想い人「伊吹夏子」の爽快な言葉
主人公である守田の想い人である伊吹夏子さんがこの小説のヒロインだと勝手に思っています。
そして彼女のとある台詞が個人的にはとっても素敵だなぁ、と思いました。
とにかく「あ、なんか頑張ろう。」と素直に思えるような言葉が物語の後半に登場します。
「君は人生の荒海に乗り出すのであるな?」
「守田君は乗り出さないの?」
「乗り出すべきか、乗り出さざるべきか」
「またそんなこと言って!」とアハハと笑われた。
「伊吹さんだって、『乗り出したくないなあ』と思うこともあるだろ?」
僕がそんな目糞鼻糞虫的なことを呟くと、伊吹さんはべつに馬鹿にすることもなく、ニッコリ笑っていいました。
http://ameblo.jp/frog-venus/entry-11199426508.html
この後に、伊吹さんが放った言葉はこの小説を読んで確かめてほしいと思います。
5:太陽の塔
森見登美彦さんのデビュー作であり、日本ファンタジーノベル大賞を受賞した作品です。
冴えない男子の失恋日記みたいな感覚で読めます。女性に振られた捻くれ男子学生と、その捻くれた仲間達との捻くれたお話。
最後のドタバタ騒動としんみりとした結末に体が満たされます。
私は「失恋を経験したすべての男たちとこれから失恋する予定の人に捧ぐ」というコピーを見た瞬間に購入を決めました。
<ココがおすすめ①>彼女に振られた男子大学生がとった行動は「彼女研究」
主人公を袖にした水尾さんという女性がこの作品のヒロインです。
タイトルである太陽の塔をこよなく愛し、知的で、可愛く、奇想天外で、支離滅裂で、猫にそっくりで、やや眠りをむさぼりすぎる、じつに魅力のある女性です。
そんな可愛い彼女に振られた主人公はかつての恋人を「観察と研究」という名目で追いかけます。彼女に関するレポートを240枚書き上げ、自らの調査能力と圧倒的な妄想力で研究という名のストーカー行為を繰り返します。
そのストーカー行為のストラテジーこそが今作品の見どころです!
<ココがおすすめ②>ストーカー行為を正々堂々と表現
ストーカー行為を全力で正当化する面白さがこの作品のおすすめポイントでもあります。
”主人公の男の手記”という設定で書き進められていく物語の中には「知的」「研究」「誇り」などという真っ当な言葉が何度も登場します。
やっていることは悲惨そのものですが、森見さんの独特の文章表現で見事なまでに面白い作品に仕上がっています。それらのギャップに思わずクスリとしてしまうこと間違いなし!
6:ペンギン・ハイウェイ
最初にタイトルに惹かれて購入して、読み終わった後に、「え?森見登美彦さんが作者なの?」と驚いたほどにこれまで森見さんが書いてきた小説とは一線を画す作品です。
舞台は京都でもなければ、主人公は冴えない男子大学生でもありません。日々の努力を欠かさない小学生の少年が主人公の物語です。
ノスタルジックなファンタジーといった感じなので、特にオトナの方々に読んでほしい作品です。
少年の送る多忙な研究の日々に突如舞い込んだペンギンの謎とそれを解き明かそうとする少年の探検に、一気に引き込まれていきます。特にラストは森見登美彦節が炸裂し、怒涛の展開をみせてくれます。
<ココがおすすめ①>大人のように落ち着いた小学生と子供のように無邪気なお姉さんのコントラスト
日々の発見をノートに記録し研究漬けの毎日を送る大人びたちょっと生意気な”少年”と、少年の行きつけの歯医者で働くちょっぴり不思議で子供のような振る舞いをする”お姉さん”の比較が読んでいて面白いです。
「ペンギンが街に現れた原因は宇宙人だ!」と言うお姉さんに対して、「根拠がありません」と返す少年。何気ないやりとりもなんだかほっこりしてしまいます。
おわりに
以上、森見登美彦さんのおすすめ小説を紹介させていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
舞台である京都の不思議な魅力と森見登美彦さんが描く超個性的なキャラクター達が融合した作品はどれも読んでいてワクワクするようなものばかりです。
森見さんの作品は、読んだ後の感覚が、仲の良い友人との楽しい時間を過ごした後のちょっぴり切なくて、でもまだワクワクしている感じによく似ていると思います。
「休日の日は少しだけ、現実から離れたいな」と思っている方はぜひともこの世界観に溺れてみてはいかがでしょうか。
今後も随時、森見登美彦さんの作品を追加していこうと思いますのでもしよろしければチェックしてみてください♪