一般的にも私的にもいわゆる“鉄板”の感動ヒューマンドラマを敢えてチョイスしてみました!もう観たよ…もう知ってるよという方でも納得の〈感動ポイント〉解説とともに、振り返ってもう一度鑑賞してみましょう。泣ける映画は何回観ても泣けます!
目次
ショーシャンクの空に(1994)
《どんな逆境の中でも決して希望を捨てず生き抜く!“自由への闘い”の物語》
フランク・ダラボン監督、ティム・ロビンス主演、スティーブン・キングの「刑務所のリタ・ヘイワース」(1982)を原作とした作品です。観終わった後、必ず深い感動と勇気をもらえる映画です!
〈感動ポイント①〉ロック・ハンマーとリタ・ヘイワースのポスター
有能な銀行員だった主人公アンディは、冤罪によってショーシャンク刑務所に投獄されてしまいます。暴力にあっても屈することなく抵抗を続けるアンディは、悪辣な環境の刑務所を少しずつ住みよく変えていきます。もちろん自由になるという希望は捨てずに…。そのために彼は趣味として鉱石採取用のロック・ハンマーと、ハリウッドスターのリタ・ヘイワースの大判ポスターを手に入れるのです。
〈感動ポイント②〉豪雨の中とメキシコの海
物語の大きな転換点である、アンディが豪雨の中で両手を広げているシーンは、DVDのカバーにもなっていますが、確かに一番重要な場面ではあります。それでも私が一番お勧めしたいシーンは、やはりラストのどこまでも青く美しく広がるメキシコの海です。最後にこの海を見てしまうと、最後まで諦めずにどんな逆境にも立ち向かって、その時のベストを尽くして生き抜かなくては!と思わずにはいられません。
フランク・ダラボン監督はこの作品の後、再びスティーブン・キング原作で『グリーンマイル』を撮っていますが、この作品も深い感動を与えられる傑作だと思います。
ニュー・シネマ・パラダイス(1988)
《映画を愛するすべての人へ―ノスタルジックな“映画愛と青春”の物語》
ジュゼッペ・トルナーレ監督、フィリップ・ノワレ主演のイタリア映画です。少年トトを演じたのはサルヴァトーレ・カシオで、現在は芸能界を引退し、故郷のシチリア島でレストラン兼宿泊施設を経営しているそうです。劇中のエンニオ・モリコーネの音楽はいまも心に残っています。
〈感動ポイント①〉新パラダイス座と古き良き映画たち
主人公トトはシチリア島の僻地の村で暮らす少年で、村唯一の娯楽・教会兼映画館へ足しげく通っていました。そこはトトにとって世界を知る窓であり、村人との共感空間でした。そこで出会ったアルフレード映写技師と親しくなり、映写機の操作を覚えていきます。火事により焼失した映画館は“ニュー・シネマ・パラダイス”(新パラダイス座)として生まれ変わりました。映写技師として働き始めたトトにとって、そこで上映される古き良き映画の数々は青春そのものでした。
現代では家で気軽にDVDやテレビで映画鑑賞できますが、当時は映画館に行かないと映画が観られない時代でした。映画館そのものが映画との思い出の場所になっていたのです。
〈感動ポイント②〉人生の師アルフレード
初恋と兵役、そして映写技師としての失職と失恋―失意のトトにアルフレードは厳しい言葉を投げかけます。「人生はお前が観た映画とは違う、もっと困難なものだ!」。映画の素晴らしさと人生の厳しさを教えてくれたアルフレードが、トトに残してくれたフィルムに自然と涙があふれ出します!
フィールド・オブ・ドリームス(1989)
《すべての野球好きの父と息子に観てほしい、“夢の球場”の物語》
フィル・アルデン・ロビンソン監督、ケビン・コスナー主演、原作はW・P・キンセラの「シューレス・ジョー」(1985)で、アメリカの実在の作家サリンジャーが登場しています。
〈感動ポイント①〉シューレス・ジョーとブラックソックス事件
物語のキーパーソンというべき人物、それがシューレス・ジョーです。アメリカメジャーリーグに実在した野球選手で、本名はジョセフ・ジェファーソン・ジャクソン、あだ名がシューレス・ジョーです。シカゴ・ホワイトソックスの外野手で、とても人気のある選手でした。
しかし1919年に起きた八百長事件「ブラックソックス事件」により、アメリカ球界を追放されてしまいました。
映画では主人公レイ・キンセラが謎の声に導かれて自分のトウモロコシ畑に作った球場に一番初めに現れます。きっと原作者キンセラにとっても一番思い入れのある選手だったのでしょうね。
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感動ポイント②〉J・D・サリンジャーとテレンス・マン
サリンジャーは「ライ麦畑でつかまえて」(1951)が代表作のアメリカの小説家です。公に姿を現さず、作品の映画化を拒み、1965年の「ハプワース16、1924年」を発表後は40年以上沈黙を守り、ニューハンプシャー州に隠遁していました。W・P・キンセラの「シューレス・ジョー」では、隠遁生活を送っているサリンジャーを実名で登場させていますが、映画ではテレンス・マンという名前になっています。キンセラにはサリンジャーも思い入れのある作家だったのでしょう。作品の中でも重要な役割を担っています。
私もサリンジャーには思い入れがあります!作風は幻想的なのにどこかリアルで、大学生の時にむさぼり読んでいました。特に「ナイン・ストーリーズ」(1953)というサリンジャー自選の短編集が大好きでした。
レナードの朝(1990)
《治療不能の難病に挑んだ医師と患者の心の交流を描いた“生と奇跡”の物語》
ペニー・マーシャル監督、ロバート・デ・ニーロ、ロビン・ウィリアムズ主演の作品で、原作はオリバー・サックス医師の医学書「Awakenings」(1973)を基にしています。“生”とは何か、深く考えさせられる映画です
〈感動ポイント①〉ノンフィクションの医術書が原作
『レナードの朝』の原題でもある「Awakenings」は、マウント・カーメル病院に入院していた嗜眠性脳炎の患者20名に、実際に治療を施したオリバー・サックス医師が記した医術書です。実話に基づく物語は、“目覚めの奇跡”とともに“生”へのつきない探究心を生みます。
〈感動ポイント②〉レナードの目覚めと最後のダンス
映画ではサックス医師はセイヤー医師となり、重症患者レナードにパーキンソン病の新薬を使って、30年ぶりの目覚めを実現します。目覚めたレナードは生きていることの喜びをかみしめて恋もします。恋した女性ポーラの手を取り、つかの間のダンスを踊るのですが、症状が後退しつつあるレナードには、それが最後とわかっていたのかもしれません。彼女が去っていく姿を窓から見つめるレナード、それを見守るセイヤー医師の姿が切ないです。
ライフ・イズ・ビューティフル(1997)
《人生は困難の連続…それでも美しい!“父の愛と希望”をつなぐ物語》
イタリアの俳優ロベルト・ベニーニが監督・脚本・主演の三役をこなした作品です。第二次世界大戦でのユダヤ人迫害をテーマにした映画で、カンヌ国際映画祭やアカデミー賞など世界各国の賞を受賞しました。
〈感動ポイント①〉一人三役のロベルト・ベニーニ
この作品を自ら書き、演じ、撮ったロベルト・ベニーニの才覚に感動しました。コメディアンでもあるベニーニならではの台詞・着想・視点で展開されます。笑顔と想像力だけでホロコーストの強制収容所から愛息を守ろうとする父親の懸命な姿に心打たれます!
〈感動ポイント②〉グイドの「ゲーム」のシナリオ
主人公グイドはユダヤ系イタリア人で、ナチスの強制収容所に送られ愛妻とも離れ離れになります。女・子供からガス室に送り込まれる収容所で、息子を守るために考えた一つの“嘘”―それは「これはゲームだ」というシナリオです。どんなに困難な状況でも笑顔を忘れない、“笑いの力”がいかに勇気を与え希望に変えられるかを、何度観ても実感できる作品です。
シザーハンズ(1990)
《ハサミの手と純粋な心を持つ人造人間の切ない恋…大人へのファンタジー》
後々何度もタッグを組むことになったティム・バートン監督とジョニー・デップ主演の第一作目のファンタジー映画です。ティム・バートン監督のダークで幻想的な世界観を堪能できる初期作品です!
〈感動ポイント①〉ハサミと無垢の対比
エドワードは製作途中の手がハサミのままの人造人間で、独り古城に住んでいたため純粋無垢なままです。まず手がハサミという発想に驚きますが、ハサミという道具が便利でもあり、人を傷つけもするということに気付くと、エドワードのやるせない気持ちにギュッと共感してしまいます!
〈感動ポイント②〉愛する人を抱けない切なさ
エドワードが町に降り、恋をするのがキムという少女です。彼女も純粋な心の持ち主で、手がハサミでもエドワードを受け入れようとします…けれどエドワードはキムを抱くことができない!傷つけてしまうから…なんて切ない!そして、彼を受け入れてくれた町の人たちも、一度ハサミの危険さに気付くと、手のひらを返すように彼を追い詰めます。受け入れられないことの切なさに胸を締め付けられます。
ペイ・フォワード 可能の王国(2000)
《少年が考えた“ペイ・フォワード”計画が世界を変える!“恩送り”の物語》
『ディープ・インパクト』のミミ・レダー監督、『シックス・センス』のハーレイ・ジョエル・オスメント主演のソーシャル・ヒューマンドラマです。原作はキャサリン・ライアン・ハイドの同名小説で、実体験から“人に恩を送る”というヒントを得て書かれた作品です。
〈感動ポイント①〉“恩返し”=ペイ・バックではなく“恩送り”=ペイ・フォワード
11歳の少年トレバーが、社会の授業で与えられた「もし自分の手で世界を変えたいと思ったら何をする?」という課題に、“ペイ・フォワード”という考え方を提案するところから物語は展開していきます。“Pay It Forward”―つまり自分が受けた善意を相手に“Pay It Back”するのではなく、他の三人に渡していくというものです。
三人といわず、誰か他の一人にでも恩送りができたら、世界は少しずつ変わっていくのでないか?と真剣に考えることができる映画です。
〈感動ポイント②〉善意のバトン
父は家庭内暴力を振るい、母はアルコール依存症…そんな家庭で育ったトレバー。幸せな環境にはいない彼が考え、実践していく「次に善意を渡す」行動が知らず知らずのうちに確実に大きな輪になっていく様子に心打たれます。社会のシモネット先生やトレバーの父母もこの輪に入っていきます。善意のバトンはきっと渡されていくと信じたいラストです。
ギルバート・グレイプ(1993)
《ゆったりとした時間の流れの中で育まれた思いやる心“成長と癒し”の物語》
『マイライフ・アズ・ア・ドッグ』(1985)で一躍有名になったスウェーデンのラッセ・ハルストレム監督がハリウッド進出後に製作した作品です。ジョニー・デップ主演で、弟役のレオナルド・ディカプリオがアカデミー賞にノミネートされ、その演技を認められました。
〈感動ポイント①〉優しい兄と美しい自然
ギルバート・グレイプはアイオワ州の田舎町に住む青年で、夫の自殺のショックで一歩も家から出れず過食症になってしまった母と、知的障害のある弟を、姉と妹の三人で世話する毎日を過ごしていました。そんなわけで町の外には出たことがないギルバートは、外の世界も見てみたいけれど、家族を放って行けないという優しい心の持ち主です。
アイオワの美しい自然の中で育まれた、兄弟姉妹のお互いを思いやる優しい心に、観てるこちらもほっこりします。
〈感動ポイント②〉無垢なアーニーとベッキーの癒し
ギルバートの弟アーニーを演じているのが若きレオナルド・ディカプリオです!初めて観たディカプリオの演技があまりに素晴らしかったので、その後の作品は全部観る!と心に誓ったのを思い出します。トレーラーで旅する少女ベッキーに出会い、癒され、世界観が少しずつ変わっていくギルバートの最後の決断に希望を感じてラストを迎えられます。
グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(1997)
《トラウマを持つ青年と喪失感を抱えた心理学者の“許しと受容”の物語》
ガス・ヴァン・サント監督、マット・デイモン、ロビン・ウィリアムズ主演のヒューマンドラマで、当時まだ無名だったマット・デイモンはこの作品で一躍注目される俳優となりました。彼がベン・アフレックと書いた脚本はアカデミー賞脚本賞を受賞しています。
〈感動ポイント①〉マット・デイモンとベン・アフレック
この映画は、マット・デイモンが大学在学中にベン・アフレックと共作した脚本から作られ、実際同様にウィルを厳しくも励ます親友チャッキー役でアフレックも出演しています。主人公ウィルと同じように、この映画でその才能が花開き、世に認められたマット・デイモンの演技が素晴らしいです!
〈感動ポイント②〉許しあい受け入れることの難しさ
ウィルと同じように心に傷を抱えている心理学者ショーン・マクガイア。ウィルは彼のセラピーを受け入れることで、少しずつ心を開いていきます。相手に自分のことをさらけ出し受け入れてもらうこと、そしてその逆に相手に心を許し受け入れることの、何と困難なこと!その微妙な心の動きを表すシーンに心を振るわせられます。特にショーンがウィルに「君のせいじゃない」と何度も言い続けるシーンは、ウィルの視点に立っても、ショーンの視点になっても心揺さぶられます!
レインマン(1988)
《自閉症の兄と自由主義の弟二人がたどる“愛情と記憶”のロードムービー》
バリー・レヴィンソン監督、ダスティン・ホフマン、トム・クルーズ主演の作品で、アカデミー賞・ゴールデングローブ賞・ベルリン国際映画祭でそれぞれ作品賞を受賞しています。サヴァン症候群を題材にしたヒューマンドラマであり、兄弟のロードムービーでもあります。
〈感動ポイント①〉サヴァン症候群のキム・ピーク
その驚異の記憶力で知られた実在の人物、サヴァン症候群のキム・ピークが、この映画の主人公レイモンドのモデルとなっています。映画に登場する記憶力に関するエピソードには仰天します!床に落ちた爪楊枝をその一瞬で数え上げたピークの実話が元になっているシーンや、Kマートの下着じゃなきゃ着ない!と言い張り続けるシーンなど少しコミカルな場面もあり、弟チャーリー役のトム・クルーズとの掛け合いが面白い映画でもあります。とにかくレイモンドを演じたダスティン・ホフマンの緻密な演技には驚きます!
〈感動ポイント②〉兄弟の絆の記憶―レインマン
初めは財産目当てでレイモンドを連れ出したチャーリーでしたが、車で一緒に旅するうちに幼いころの記憶がよみがえり、つらかった幼少期に癒しの存在だった“レインマン”のことを思い出します。この旅が自分の人生を見つめなおすきっかけとなり、二人は自分の道を歩き出すことになっていきます。
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